心の傷は遺伝する!? あなたのトラウマは癒えていますか?

夫婦間で起る葛藤・不信・争いは、時に大きな心の傷となって、お互いの心の中に残ります。

その傷を癒さずに放って置くと、それは膿み、永遠に癒えることなくあなたの人生を蝕み続けます。

しかも心の傷は、DNAを通して次世代に遺伝していくことが、最新の研究を通してわかってきました。

もはや心の傷を癒すことは、あなた一人だけの問題ではありません。

愛する子供たちにそれを拡散しないためにも、心の傷をしっかり手当てすることが大切です。

トラウマはDNAに刻まれる

「トラウマ」と呼ばれる心の傷が、実際に遺伝子に変化をもたらし、世代間で受け継がれていくという衝撃の研究結果が発表されました。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究によると、幼い頃、身体的・精神的・性的虐待を受けた成人男性34人の精子のDNAに、トラウマによる影響の痕跡がはっきりと認められたのです。(出典:児童虐待、被害者に残る「分子の傷跡」 研究

 

人間が生を受ける受精の段階において、DNAの情報は既に決定されているものと考えられてきましたが、現在では環境要因や個人の人生経験が遺伝子に影響を及ぼすことが知られています。

既に重度のうつ病がDNAに遺伝的変異をもたらすことが、マサチューセッツ総合病院の研究チームによって発表されていますが、後天的に受けた精神的傷が、次世代に受け継がれるほどの大きな影響として遺伝子レベルに刻み込まれているというのは、驚くべき事実としか言いようがありません。

夫婦関係で生まれやすいトラウマ

上記の研究では、児童虐待の被害者となった男性が実験対象とされていますが、トラウマと言うのは幼い頃にだけ生じるものではありません。

大地震などの災害や、愛する人との突然の離別によっても生じます。

また、配偶者の不倫やDV・モラハラなどは、もう一方の配偶者とって深刻なトラウマとなりえます。

虐待・いじめ・事故・事件・レイプ・自然災害など、身の危険を感じるような出来事に遭遇することによって生じるトラウマと、それに伴うフラッシュバックなどのPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、その後の人生に大きな影響を及ぼすことが広く知られています。

 

しかしトラウマは、単に危険に晒されることによって生じるだけではありません。

愛する人との愛着の絆が切れたと感じる時に、人は同様の恐怖と不安に晒され、深い心の傷を負うことがあります。

特に、人が最も強い絆で結ばれることを願っている、親子間・夫婦間においてのトラウマは、些細な出来事を通しても形成されることがあるのです。

実際の出来事の重大さや危険度が問題ではなく、その人が愛する人からの愛を失ったと感じてしまった時、それはトラウマとなってしまうのです。

私たちが心の安全基地を失うとき

自分を無条件愛してくれていると信じていた親の何気ない言動から、ふと「親が自分を愛してくれたのは、自分が親の気に入るいい子でいたからなんだ」という思いが、頭をよぎったことはありませんか?

ありのままの自分(Being)が愛されているのではなく、親の気に入ることをしたとき(Doing)だけ愛される、という認識です。

親からの「無条件の愛」に対する信頼感が、「条件付きの愛」にとって替わられるとき、私たちは心の安全基地を喪失する体験をするのです。

親に対する不信は、怒りや反抗という形で表出されることもありますが、大人になるにつれて、親も不完全な一個の人間であることを受け入れ、「無条件の愛」を親に期待することを諦める、という形で折り合いをつけていくようになります。

親子関係で得られなかったものを配偶者に求める

ところが、この過程が配偶者との間で繰り返されることになります。

私たちは、親から与えられなかった「無条件の愛」を、配偶者に求めてしまいがちです。

夫婦が結婚するとき、生涯変わらぬ愛を誓い合います。

2~3年後に離婚することがわかっていたなら、誰も結婚などしないことでしょう。

そこには、配偶者の愛に対する基本的な信頼があり、それが私たちの心の安全基地となっているのです。

配偶者の浮気や不倫は、まさにそうした心の安全基地を破壊する出来事であり、安心感を失った時、私たちは大きな不安と恐怖に襲われ、心の中にトラウマを形成してしまうのです。

 

夫の不倫に直面した妻たちの多くは、夫の謝罪や、二度と不倫しないこと、不倫相手との絶縁を求めます。

それは、夫婦間の信頼という、失われつつある心の安全基地を取り戻そうとする、必死の行為なのです。

ところが夫は、妻の期待を裏切るような行動を取ることが多々あります。

しらばっくれて嘘をつく

逆ギレして妻を責める

「離婚する」と妻を脅す

もう妻を愛していない、と言う

これらの言動は、夫の対応に一縷の望みをかけていた妻の心に、とどめを刺すことになってしまいます。

夫としては反射的に自己防衛しただけだとしても、妻の心の傷をさらに深めてしまう結果となるのです。

何よりも大切なのは、あなた自身の心の傷を癒すこと    

遺伝子レベルで細胞に刻まれるようなトラウマは、放って置いたら自然に治るようなものではありません。

トラウマの癒しを夫に求めても、夫が自ら改心しない限り難しいでしょう。

それどころか、夫の度重なる不貞行為や不誠実な態度によって、トラウマを悪化させてしまうこともあります。

肉体の傷を癒すためには、あなた自身が持つ自然治癒力と、それを助ける医者や看護師が必要であるように、心の傷を癒すのにも、あなた自身の心の治癒力と、それを見守り支える存在が必要です。

カウンセラーとは、そのような役目を担う存在であり、カウンセリングを通してあなた自身の心を癒すことこそ、何より最優先されるべきことではないでしょうか。