要求の多い夫に、どこまで合わせればいい?

夫婦喧嘩はなぜ起こるのでしょうか?

それは一言で言うと、相手との間に、境界線がハッキリ引けていないためです。

人間関係において「境界線を引く」とは、「私」と「あなた」は違う人間で、二人の間にしっかり区別があることを自覚することです。

夫婦や親子などの近い間柄であるほど、相手は自分とは違う人間であり、違うものの見方をしたり、違う意見を持って当然、という認識をお互いに持つことが大切なのです。

これがしっかりできていないと、相手が自分の思うように反応してくれなかったり、意見の相違があったりすると、イライラしてしまうのです。

依存心の強い夫を作るカーリング・ペアレンツ

夫婦の間でよくあるのが、言葉でしっかり説明しなくても、相手が自分の気持ちを察してくれるだろう、という思い込みです。

特に夫が妻に対して要求が多く、それを満たしてもらえない場合に、怒ったり不機嫌になり、妻にストレスを与えるケースがよくあります。

最近は、少子化のせいか、子供が自分から頼む前に先回りをしてやってあげたり、困らないように手助けする、過保護で世話好きな親が増えています。

こういう親をカーリング・ペアレンツと呼びますが、カーリングというスポーツでは、ストーンができるだけ遠距離を進めるように、その行く先々をブラシで磨いてスムーズにしますよね。

それとよく似ているので、こう呼ばれるのです。

カーリング・ペアレンツに育てられた子供は、結婚してからも、「自分の欲求を相手が悟ってくれて当然」という無意識の期待を持っています。

その結果、妻が自分の思い通りにしてくれないと、イライラしてキレたり、「なんでわからないんだ!」と怒ったりしてしまうのですが、これは夫婦の間に境界線を引けていないためです。

 

妻が自分に感謝してくれて当然

妻が自分の欲求を最優先に満たしてくれて当然

妻が自分の感情を受け容れてくれて当然

 

という、ある意味幼児的な母親との一体感を、妻に対しても期待してしまうのです。

無条件に合わせることが害になることも

これに対して妻の立場で陥りやすいのが、「自分は気が利かない妻だ」と自分を責めてしまうことです。

夫に気に入られるために

もっと気が利く妻にならなければ

もっと察することのできる妻にならなければ

もっと相手を思いやる妻にならなければ

と自分をプッシュしつづけます。

ところが、妻が夫に合わせれば合わせるほど、夫は赤ちゃん返りして、ますます要求が強くなり、我が儘になっていきます。

こうしてみると、夫に従順であることが必ずしもいいこととは限りません。

夫の甘えを助長させるばかりか、留まるところを知らない夫の我が儘に、いつかは妻の堪忍袋の緒が切れてしまうことでしょう。

愛着関係と不健康な一体感

ところで、赤ちゃんの頃に母親に十分にケアされ、母子一体感を持つことは、健康な心の発達のために必要なことです。

母親との一体感によって安定した愛着が育ち、それによって心の安全基地ができると、大人になって親からの自立もスムーズにいきます。

ところが、この時期に母親から安定した愛着を得られず、反対に、自立していくべき時に過保護で過干渉な育て方をされると、不健康な母子一体感が育ち、精神的自立を妨げてしまいます。

そして、大人になって結婚してからも、相手の事情や価値観を無視して、「自分のことをわかってほしい、満たしてほしい」という思いが強くなるのです。

妻が要求を満たしてくれないと、怒ったり不機嫌になる夫は、実は母親との健康な愛着関係を築けていない場合が多いのです。

 

こうした夫の我が儘に対して、たとえ夫を怒らしたとしても毅然とした態度で、自分の立場をはっきり伝えることが重要です。

しかし実際には、夫に嫌われるのが怖くてそうできず、ますます夫に尽くしてしまう場合が多いのです。

日本の社会に強く根付いている「良妻賢母神話」の影響で、良い妻になるためにひたすら自分を否定して、夫に合わせようと努力するのです。

しかしそれは、行き過ぎると不健康な共依存状態を作り出し、次のようなループに陥ります。

 

夫が境界線を引けず、我が儘を言う

妻はそれに対して抵抗せず、ますます夫に合わせようとする

夫はますます妻に依存し、我が儘になる

 

妻は妻で「夫には私が必要だ」という思いで自己肯定感を満たそうと、夫に尽くし続けます。

妻の見捨てられ不安が強いと、この傾向はさらに強まります。

健康的な境界線を引くには?

夫婦の間に健康的な境界線を引くには、自分の考えや気持ちを、相手にしっかり伝えることです。

たとえそれで相手の機嫌がさらに悪くなっても、それを怖れずに自分の出来ることと、出来ないことを伝えることです。

たとえば、妻に要求が多い夫に対しては、こんな風に伝えてみるのはどうでしょうか?

「私にもやることは一杯あって、結構忙しいのよ。あなたの欲求を完全に満たすことは出来ないこともあるわ。私は完ぺきではないから。あなたにとってそんなに大事なことなら、自分でやったらどうかしら」

もちろんこの後、夫は逆上するかもしれません。

それでも、冷静に淡々と自分の立場を貫くことです。

あなたには、そうしていい権利があるのです。

夫婦というのは同等な関係であり、あなたは夫の母親でも、僕でもありません。

夫があなたに対する幼児的な全能感(あなたを思い通りにできるという思い込み)を捨てるまで、何度でもはっきり伝えることです。

そうでなければ、夫はいつまでもあなたに依存し続け、年を取るにつれて、その傾向はますます強まるでしょう。

多くの熟年離婚の原因がここにあります。

夫自身も精神的に成長できるように、時には「物わかりの悪い妻」を演じてみることも大切なのではないでしょうか。