夫婦関係修復の敵・「不安」を和らげる方法

夫婦仲がうまく行かない時、私たちは様々な気持ちを体験します。

相手と心が繋がっていない寂しさ

相手の心が、自分を離れたのではないかという恐怖

相手にとって自分は大切な存在ではない、という悲しみ

相手の理不尽な態度に対する怒り…

 

どころが、これらの感情よりも、もっと厄介なものがあります。

それは、「不安」です。

不安は、私たちの生活を著しく脅かします。

不安があるために、何をしても喜べなかったり、思考がどんどんネガティブな方向へと向かってしまいますよね。

また、不安ゆえに焦って行動し、マイナスの結果となることもあります。

夫婦関係を修復するためには、不安を克服することがとても重要です。

ここでは、不安を和らげる方法についてお話ししたと思います。

不安の原因を知る

そもそも不安という感情は、どこからくるのでしょうか?

不安とは、高等動物に備わった感情であり、危険が近づいていることを察知すると

動物は不安を感じます。

不安になることで、何らかの行動を起こし、危険を回避するためのものなのです。

ですから動物の場合は、危険が去った時点で不安は解消されます。

 

ところが、人間の場合はもう少し複雑になります。

人間は他の動物に比べ、知能が著しく発達しているため、未来に起こることに対して、ありとあらゆる想像をする力を持っています。

つまり、まだ起っていないことを、あたかも現実に起っているかのように、ありありと感じることが出来るのです。

 

あがり症の人が、人前でスピーチをしなければならなくなったとき、その人は数日前から緊張し続けます。

頭の中には、大勢の人の前で緊張し、言葉が出てこないで立ちつくしている自分の姿がありありと浮かぶかもしれません。

今まさに、それを体験しているかのように、緊張して冷や汗をかき、心拍数は上がります。

豊か過ぎる想像力が作り出すイメージによって、まるでそれが現実の出来事であるようなリアルな感情を感じてしまうのです。

不安だと、人は確かめたくなる

ここで例をあげてみましょう。

妻が偶然、夫の携帯電話を見て、知らない女性から着信があったのを発見したとします。

その瞬間、信じていた夫が不倫をしているのかもしれない、という不安に囚われます。

ありとあらゆる想像が妻の心をよぎり、夜も眠れなくなります。

心配に疲れた妻は、不安から逃れたくて事実を確かめようとします。

頻繁に夫に連絡を入れて居場所を確かめたり、高額の探偵を雇って、事実を確かめようとするかもしれません。

これらの行動が裏目に出て、夫婦関係が取り返しのつかないことになることも多いのです。

事実は確かめたけれども、それによって、双方が一生消えることのない心の傷を負ってしまうのです。

 

また、女性は男性の愛を常に確かめていたい、と感じます。

女性にとって愛は「感じるもの」なので、夫の態度や言葉に愛を感じなくなると、不安になります。

男性は、結婚してしまうと安心して、それほど愛情表現をしなくなるのが普通です。

ところが、妻は「夫はもう、私に関心がなくなったんじゃないか?」と感じて不安になり、様々な形で夫の愛を確認しようするのです。

不安の根源にあるもの

さて、確かめるという行為によって、不安がなくなるわけではありません。

夫を問い詰めて、夫が「不倫の事実はない」と言ったとしても、「夫は嘘をついているかもしれない」と思って、さらに不安になります。

また、探偵を使って不倫の証拠を押さえたとしても、それはこれからどうしていったらよいか?という、新たな不安を呼ぶことでしょう。

 

ちょっとした出来事によっても、不安は生じます。

例えば、夫の不機嫌な顔を見た瞬間、不安になった経験はありませんか?

単純に「夫は疲れているから不機嫌なのだ」と考えたならば、不安にはなりません。

でも、「夫は私に腹を立てているのかもしれない」と考えた瞬間、

「一体私の何がいけなかったんだろう?」

「夫は私が嫌いになったかもしれない」

などと想像がどんどん膨らんでしまいます。

更には

「私はもう夫に愛されていないのではないか?」

「こんな私は、きっと捨てられるだろう」

という極端な思考にまで行きつくことがあります。

これをスキーマ呼び、その人の内面に強い思い込みとして内在している信念を指します。

これらの思い込みは、ごく幼いころに作られ、成長過程において起った出来事によって、さらに強まったものです。

他の人が客観的な立場から、「そのスキーマは正しくない」と指摘しても、本人は固くそれを信じ込んでいます。

「私は捨てられる」などのネガティブなスキーマを持っていると、小さな出来事からでも、自分の存在を否定されたようなネガティブなメッセージを受け取り、強い不安に囚われてしまうのです。

不安の思考スパイラルから脱却するには?

こうした心の中の反応プロセスは一瞬のうちに起こるので、自分の中にどのような思考やスキーマがあるのかに気づくことは難しいのです。

いったん不安な感情に支配されると、想像がどんどん膨らみ、更なる不安を呼ぶ、という悪循環に陥ってしまいます。

あたかも、自分の信じているスキーマの通りに、夫から見捨てられた自分の姿がありありと脳裏に浮かんだり、捨てられた悲しみや絶望感が、リアルに感じられるのです。

 

不安の根源を取り除くには、自分でも気づかない、心の奥深くにあるスキーマの正体を見破ることが大切です。

自分の思考に気づいたら、それを言葉にして口で言ってみたり、紙に書き出してみましょう。

そして、それが本当に理にかなった思い込みであるかということを、冷静に考えてみるのです。

それは自分の心が作り出しているものだ、と自覚することが大切です。

不安をリセットするマインドフルネス

一度起ってしまった不安の思考スパイラルをリセットするにはどうしたらよいでしょうか?

不安の思考スパイラルに囚われている時の自分は、現実の世界に生きてはいません。

心の内側にあるイメージを見ているのであり、外の現実世界が見えなくなっていたり、極度に歪められた形で認識されています。

 

この時に役に立つのが、マインドフルネスを使って不安をリセットすることです。

自分の脳裏に浮かんでいるイメージが、視覚がとらえた現実のものか、自分の心が作ったイリュージョン(脳内映像)なのかを、はっきり区別するのです。

目をしっかり開いて、今・此処でものを見ている自分、呼吸している自分を意識してみましょう。

呼吸に意識を向け、鼻から入ってくる空気を感じ、肺が膨らむ感覚を意識します。

また、吐く息に注意を向けてみます。

現在目に映っている風景をしっかりあるがままに見ます。

椅子に座っているとしたら、椅子に当たっている背中やおしりの感覚に注意を向けてみましょう。

聞こえているかすかな音にも注意を向けてみます。

 

不安が存在するのは、心の内側の世界です。

心の外側の世界に意識を向けることで、不安の思考スパイラルから抜け出すことができます。

仏教の教えでは、古くから妄想を取り払う方法として、座禅などのマインドフルネスな瞑想法を取り入れてきました。

過去の記憶や未来の心配など、心に浮かぶ様々な雑念に囚われず、それをただ流していく。

そして心を無にし、今・此処に存在する自分と一つになるのです。

この訓練を続けることで、不安の思考スパイラルから抜け出せるようになります。

まとめ

夫婦関係の修復・改善するには、不安を和らげ、心を安定させることが重要です。

たとえ現実に、夫婦間に様々な問題が起っているとしても、いたずらに不安にならずに、安定した心で対処すれば、道が開けていきます。

また、普段から安定した心で暮らしていると、配偶者は安心感を感じ、家庭が安らぎの場になります。

心配性で、常に確認し続けないと気が済まない妻を持つと、夫は安心できず、疲れてしまうのです。

あるがままの現実を受け入れ、今できることを落ち着いて考えることが、夫婦関係を修復する第一歩ではないかと思います。