あなたのインナーチャイルドを縛る禁止令
インナーチャイルドを癒すと夫婦関係がよくなる
夫婦関係に悩む方が、カウンセリングなどを通して、自分の潜在意識に向き合い、インナーチャイルドと呼ばれる子供の頃そのままの心に出会い、それを癒していくことで、夫婦関係が劇的に改善される場合が多くあります。
夫婦関係においては、意識の世界よりも無意識(潜在意識)から出てくる思考・感情・行動の習慣が影響を及ぼすため、潜在意識の世界を変えなければ、いくら意識の世界で自分を変えようとしても、限界があるのです。
心の中に傷ついたインナーチャイルドを抱えていると、相手のちょっとした一言や、表情、声のトーン・態度などに敏感に反応し、子供の頃に十分に愛されなかったという思い(心の傷)とつながって、理性では抑えきれない不安や怒りが湧きおこり、感情の嵐に支配されてしまいます。
自分自身のインナーチャイルドの存在に気付き、チャイルドに向き合い、チャイルドを抱きしめる、という過程を経て、今まで誰からも顧みられなかった、心の奥深くに置き去りにされたままの自分のチャイルドを癒し、愛を与え、健康な姿に回復させることが「インナーチャイルドの癒しのワーク」です。
インナーチャイルドを縛る禁止令
インナーチャイルドは、親との関係の中で小さい頃に植えつけられた、いくつもの禁止令によって縛られています。
禁止令とは交流分析の中で使われる言葉ですが、子供がその子らしくあることを許さない親からの命令という形で、子供時代に潜在意識に深く刻み込まれたものなのです。
子供にとって親は絶対的な存在で、親に頼らずには生きていけない立場だったため、たとえ虐待をするような親であったとしても、その親に気に入られ愛されようと健気な努力をするしかありません。
また、親が子供を立派に育てようとするあまり、子供を厳しく躾けて自由奔放でいることを許さない場合も、禁止令として子供の心に刻印されます。
禁止令はが刷り込まれる過程には次のようなものがあります。
- 親から受けた言葉そのものである場合
- 虐待などの行為によって、子供が明示的な否定のメッセージを受け取る場合
- 親の言葉や態度から来る暗示的なメッセージによって、子供が禁止令を刷り込まれる場合
生きづらさにつながる13の禁止令とは?
禁止令の中でも、その人の人生にマイナスの影響を与え、生きづらくさせるのが、次の13の禁止令です。
禁止令 | 禁止令を植え込む態度 | |
1 | 存在するな (生きてはいけない) | 酷い体罰・虐待
「お前なんか生むんじゃなかった」 |
2 | 重要であるな | 「大人の会話に口を挟むな」
「お前は黙っていなさい」 |
3 | 楽しむな(子どもらしくあってはならない) | 「お姉ちゃんなんだから、我慢しなさい」
「遊ぶ時間があったら勉強しなさい」 |
4 | 成長するな(自立してはいけない) | 過干渉・過保護
「一人じゃ何にもできないんだから」 |
5 | 感じるな(感情を表現してはいけない) | 「男の子は泣くもんじゃない」 |
6 | 考えるな | 「おまえは黙って勉強してればいい」
「親に口答えするな」 |
7 | 成功するな | やったことを常に批判される場合 |
8 | おまえ自身であるな | 「男の子だったら良かったのに」 |
9 | 健康であるな | 病気の時だけ気遣ってくれる場合・病弱な親 |
10 | 仲間を作るな | 「ああいう子とは付き合うな」 |
11 | …するな | 「ダメよ」「危ない」を連発する親 |
12 | 信じるな(愛するな) | 親を失う、親が忙しく触れ合う機会がない |
13 | 欲しがるな | 親が苦労したり、我慢の生活をしている場合 |
あなたを駆り立てる5つのドライバー
禁止令は、すべて「~であってはならない」「~するな」という否定形の命令です。
本来の傷ついていない子供は、フリーチャイルド或いはワンダーチャイルドと呼ばれ、好奇心旺盛で自由奔放、創造性に満ち、感受性豊かな姿で、生きる喜びと生命力に満ちています。
ところが、成長の過程で様々な禁止令を与えられ、そのままの自分であることを否定された結果、
子供は、自分がどのようであった時に親が認めてくれたかに敏感になり、それを満たした時だけ生存を許される自分、愛を受けられる自分である、と考えます。
それが「拮抗(きっこう)禁止令」と呼ばれる5つの「ドライバー」で、次のようなものです。
①他人を喜ばせろ
②努力せよ
③急げ
④強くあれ
⑤完全であれ
ドライバーの背後に隠れているもの
「ドライバー」というのは、「人をある方向に突き動かすもの」という意味です。
禁止令によってあるがままに存在することを否定された子供は、ドライバーの命令を満たすことによってのみ、自分の存在を許されると感じ、全ての行動においてその基準を満たそうとします。
潜在意識の中の超自我にしっかりと根を張った「ドライバー」は、心の中の厳しい親のように、常にその人を駆り立て、そうしなければ不安を感じるようにさせるのです。
ところが、ドライバーの命令の背後には、強い禁止令が隠されています。
例えばそれが「存在するな」であったとしましょう。
ドライバーの条件を満たしている時は、自分自身に「存在してもいい」と許可を与えることができます。
ところが、ドライバーが要求する条件を満たせなくなったり、ドライバーを満たしても認められないという経験をした時には、「存在するな」という禁止令が前面に出てきて、「こんな自分は存在してはいけないんだ」という気持ちになってしまうのです。
このようにドライバーとは、禁止令を条件付きで許可するものであり、それを満たせない場合は禁止令を免れない立場になることを意味します。
禁止令は自分も家族も縛る
禁止令は、古くからの戒律のように潜在意識に書きこまれているため、自分では気づくことができませんが、ドライバーは自分の心を観察することによって、比較的容易に発見することができます。
禁止令を多く持つ人ほど、ドライバーによって常に駆り立てられているため、努力家で立派な仕事をしている人も多くいます。
ところが、本人はあるがままの自分に決して満足することが出来ず、夫婦関係などの人間関係で生きづらさを感じている場合が多いのです。
また禁止令を持つ人は、配偶者や子供に対しても、同じ禁止令で縛ろうとしてしまいます。
あるがままの相手を認めることが出来ず、自分の持つドライバーで相手を急き立てたり、相手がそれを満たさない時には愛を与えないという行動を、知らず知らずのうちにとってしまうのです。
禁止令とドライバーから解き放たれるために
インナーチャイルドの癒しは、禁止令やドライバーに縛られたインナーチャイルドに、あるがままの自分で良いという許可を与えることで束縛から解き放ち、そのままの自分を愛してもいいという許可を自分自身に与えることです。
そのためには、自分を縛るドライバーとは反対のメッセージを、インナーチャイルドに与えることです。
ドライバーの命令を満たそうと不安や焦りを感じたとき、自分の胸をタップ(軽く叩くこと)しながら、「大丈夫、大丈夫」と心を落ち着かせ、ドライバーの命令を緩めるための次のようなメッセージを送ってあげます。
ドライバー |
ドライバーを緩めるメッセージ |
他人を喜ばせろ | 「自分をまず喜ばせていい」 「自分を大切にしていい」 |
努力せよ | 「疲れたら休んでいい」 「自分の出来る範囲でいい」 |
急げ | 「ゆっくりやっていい」 「自分のペースでいい」 |
強くあれ | 「弱いのは悪いことではない」 「人に頼っていい」 |
完全であれ | 「そのままのあなたでいい」 「あるがままでいい」 |
そして傷ついたインナーチャイルドへの何よりも大切なメッセージは、「私は決してあなたを見捨てないし、あなたを一人にはしないよ」というものです。
傷ついたインナーチャイルドには「親の願いに沿わない自分は見捨てられる」という「見捨てられ不安」が根底にあります。
たとえ誰が自分を認めてくれなかったとしても「私は私でよい」「私だけはあなたの味方だ」というメッセージが、チャイルドがドライバーや禁止令を手放していく勇気を与えます。
チャイルドが自由になることを許可するメッセージは「私の存在をあらしめるもの」「私の命」からのメッセージとして、傷ついたチャイルドを愛と生命力の源流とつなげ、その存在を受け入れ祝福してくれるものとなるのです。