拒絶される勇気―失われた夫婦の信頼を取り戻すには?

 

夫婦関係を修復しようとするときに、相手からの拒絶にどう立ち向かうかが問題になります。

配偶者から離婚宣言されたり、すでに別居状態にある場合、夫婦関係を修復するにはそれなりの覚悟と期間が必要です。

それは、一度失われた信頼を再び構築する作業だからです。

しかしながら、相手からの拒絶は、誰にとっても耐え難い試練です。

ここでは、相手に拒絶される痛みを乗り越え、自分の本心を伝え続ける勇気について、考えてみましょう。

拒絶している人は傷ついている

拒絶とは、苦痛を伴う現実から身を守るための自我の防御機能であり、「回避」のひとつと考えられます。

つまり、物事と向き合わないことで、自分の心がこれ以上傷つくことから守っているのです。

相手から和解を提案されても、すぐに受け入れられないのは、過去に拒絶された経験があり、その痛みを未だに解決できずにいるからかもしれません。

 

最も大きな影響を与えるのが親子関係です。

子供の時、親から拒絶されたと感じた経験があると、人に対する基本的な信頼感が低くなります。

愛してくれるはずの人であっても、いつかは自分を拒絶するのではないかという不安を、心の底に抱えるようになります。

そのため、人間関係が難しくなると、自ら心に壁を作って相手を拒絶することで、自分自身を守ろうとするのです。

拒絶の壁の向こう側にあるのは…

私たちは無意識のうちに、両親の生き方や夫婦関係をモデルにして生きています。

喧嘩をしても基本的に仲の良い両親を見て育てば、夫婦とはそういうものなのだ、ということを自然に学ぶことでしょう。

反対に両親が離婚したり、仮面夫婦や家庭内別居状態であると、自分自身の結婚生活においても、ちょっとしたことで深く傷ついたり、強い不安を感じるようになります。

そのため関係が難しくなると、修復しようと努力するより、拒絶という壁で自分を守って関係そのものをシャットアウトしようとします。

本心では幸せな家庭を願っているのに、孤独な人生脚本の筋書通りに生きてしまうのです。

仲直りしようとする妻を拒絶する夫の心理

激しい夫婦喧嘩の後に夫に「出ていけ」と怒鳴られ、思い余って家を飛び出した妻が、しばらくたってから夫の元に戻ろうとしましたが、夫に拒絶されてしまったケースを考えてみましょう。

この期間に、夫の心の中では何が起こっているのでしょう?

怒りのほとぼりが冷めて冷静になってみると、自分が言いすぎたことにも気づきます。

でも男性のプライドが邪魔をして、一度「出ていけ」と言った手前、妻にあやまることは容易ではありません。

また妻の方も傷ついたり意地を張って、夫の元になかなか戻れずにいると、修復はどんどん難しくなっていきます。

 

この時、夫が人に対する基本的な信頼感が高い場合は、自分から妻を訪ねていくなど、和解するために努力することができます。

反対に、人に対する基本的な信頼感が低いと、自分が妻を追い出しておきながらも、いつまでも帰ってこない妻の姿に、自分自身が見捨てられたと感じます。

それは過去の体験と重なって、不安・悲しみ・怒り・寂しさなどを呼び起こします。

それらの感情と向き合いたくなくて、妻のことを頭から締め出し、心に壁を作ってしまうのです。

歩み寄ろうとしても拒絶され続けるとき

このような状態から夫婦関係を修復するときには、どうしても拒絶の試練を通過します。

夫と和解したくて「私が悪かった。許してほしい。心から反省している。もう一度やり直したい」というメッセージを送っても、はじめは夫から完全無視されることがあります。

なぜなら、夫は妻のことを信じられなくなっているからです。

「口ではそう言っていても、一緒に暮らせばどうせまた同じことが起きる」と思っているのです。

そんな時、妻は心が折れてしまい、自分もまた拒絶の壁を作って閉じこもってしまいたくなることでしょう。

しかし、そこで諦めては夫の本当の心に思いを伝えることは出来ません。

拒絶する相手にアプローチする三段階

問題が起きてからの時間が長いほど、修復にも時間がかかります。

一度や二度の働きかけで心を開いもらえなくても、当然と考えましょう。

その分相手は深く傷ついている、ということです。

 

まず、かたくなな相手の態度に怒ったり説得しようとせずに、和解したいという意志を辛抱強く伝えます。

それでも相手は「修復する気は全くない」「もう心は変わらない」と言い続けるかもしれません。

しかし、それで引き下がっては、あなたの本気度を見せることができません。

相手は、無意識のうちにあなたを試しているのです。

相手の言葉ではなく、その奥にある「愛されたい」という本心の願いに向けて、忍耐強く対していきましょう。

 

そのうちに、「あなたのこういう部分に我慢ならなかった」「こういうことで傷ついた」などと、怒りや恨みをぶつけて来るようになったら、ある意味チャンスです。

たとえ多くの誤解があったとしても、その時には絶対に反論したり自己弁護しようしないことです。

弁解せずにひたすら聞いて受け止め、心から謝る、を繰り返していきます。

こうすることで、相手の中のかたくなな気持ちが、少しずつほぐれていきます。

 

誠意をもって謝った後は「これからは変わる努力をします」というメッセージを伝えていきます。

たとえ「あなたは決して変わらないと思う」と否定されても、黙って受け止めて、自分の決意を伝え続けます。

このプロセスで大事なのは、相手から何を言われても、決して怒らず弁解もしない、ということです。

カッとして怒ってしまったら、その瞬間に相手は心を閉ざします。

再び忍耐の期間を繰り返さなければならなくなります。

諦めたくなるときに考えてほしいこと

相手から「本当に愛しているなら別れてほしい」と言われることもあります。

そんな時「自分の努力は愛ではなく執着に過ぎないのだろうか?」という疑問が湧くかもしれません。

でもその時に考えてほしいことがあります。

あなたが諦めた時点で、二人の関係が修復される可能性は、ほぼゼロになります。

離婚は、離婚届にハンコを押すだけでいつでもできます。

しかし、その前に自分自身に向き合い「自分は本当に相手を愛しきっただろうか? 思いを伝えきっただろうか?」と問いかけてみてほしいのです。

たとえ相手が最後まで拒絶し続けたとしても、誠意をもって愛しきった場合と、そうではない場合とでは、潜在意識や家系に及ぼす影響に大きな差が出てきます。

あなた自身のこれからの人生や、子供たちの人生まで変わってきます。

 

拒絶された時こそ、勇気をもって自分の中から愛を出してみましょう。

たとえ相手がすぐに変わらなくても、雨垂れが何年もかけて固い岩に穴をあけるように、変わらない心で愛する努力を続けることは、どんなにかたくなな人の心をも最終的には動かします。

愛というものが受けることより与えるものであるならば、愛を与える心こそが、あなたを本当に豊かにしていくのです。