セックスレスについて考える ― 問われる夫婦の絆
日本はセックスレス大国
今、日本の夫婦のセックスレス問題が深刻化しています。
日本性科学会が1994年に定義したところによると、「セックスレス」とは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も継続されることが予想できる状態」です。
世界41カ国を対象に行われた調査によると、性生活の頻度・満足度共に、日本は最下位に位置しています。
また、セックスレス夫婦はこの20年で2倍以上に増え、2024年現在では64.2%がセックスレスという衝撃的な調査結果が。
また、頻度においても、男女ともに30代から月一回未満が半数以上となっています。
50代、60代の女性では、8割以上の人が月一回の性交渉すらない状態に。
アメリカの調査(2023年)の調査では、50代の34%、60代の26%、更には70代でも17%が、夫婦間あるいは特定のパートナーとの間で、週一回以上の性交渉がある、と答えています。
50代でもかなり活発に性生活を営んでいる様子が伺えます。
日本でレスな夫婦が増える隠れた原因とは
セックスレスが増える一方で、アニメやエロ漫画、アダルトビデオ(AV)などの分野では、日本は世界に名高いポルノ大国だということを、ご存知でしょうか?
若い男性が、生身の女性よりも、メディアを通して性的欲求を満足させるケースが多いのも、日本の社会に特徴的に見られる傾向です。
今や世界的社会現象ともなっている日本のアニメブームですが、世界の反応を見ると、日本人の女子像は、幼児的でマゾ的な要素があると言われています。
欧米諸国のように、性は男女に共通する生の基本的な欲求であり、それを楽しむのは両性においての権利である、という暗黙の了解が日本にはないように感じます。
あくまで、「男性を満足させる性の対象としての女性像」を追求する男性と、それを必死に演じなければならない日本の女性の姿が浮かび上がってきます。
外国人男性の反応は?
話が横道にそれますが、アメリカ人の男性からこんな話を聞いたことがあります。
「日本のアダルトビデオを見たけれど、あれはどうも変だよ。女性の喘ぎ声が断然不自然だね。あれじゃあ、男性にレイプされてるみたいだよ。あんなのを見て興奮するなんて、SMの気があるんじゃないかって思ったね。日本女性は、あれを見て怒らないの?」
ちなみに、アジア系の男性たちにも感想を伺ったところ、不自然だと感じている人が多いことが分かりました。
日本では、女性が性的に受け身で、時には男性にいたぶられている描写がありすぎる、との意見でした。
美少女キャラなどにおいて、幼児化された可愛い顔と、不自然に大きな胸を強調した姿は、女性を男性本位の性の対象と捉えているのではないか、との議論にまで発展していきました。
こうしたバーチャルな女子像を性欲の対象としてきた男性が、生身の大人の女性と付き合う時、そのギャップに戸惑い、健康的な性関係を持てないということも、実際にある話しです。
夫婦間の性生活における欧米社会と日本の違い
日本は縦の社会と言われます。
夫婦関係よりも親子関係を重視します。
欧米では、子供はいつかは巣立っていくもの、残るのは夫婦と考えており、家族の軸を夫婦という横の関係に置いています。
また、夫婦をつなぐ最も強い絆は心の絆以上にセックスであると考えており、それがなくなることイコール夫婦の破綻と考えるのです。
もちろん欧米にもセックスレスに悩む夫婦は沢山いますが、彼らはそれを放っておきません。
セックスについて夫婦が積極的に話し会い、カップル・カウンセリングを受けて、セックスレス解消のために積極的に努力します。
それは、セックスというものに対する偏見がなく、オープンに話し合える文化にあると共に、セックスを楽しむのは男女共通の権利である、という考えからきています。
一方が満足しても、他方が満足できない夫婦生活は、決して健康的とは言えません。
日本人のように、相手の顔色をうかがい、相手が満足しているかばかりに気を取られて、自分の快感を追究することを置き去りにするようなセックスは、結局のところセックスレスに行きつくのではないでしょうか?
日本人の夫婦は、もっとオープンにお互いの性について積極的に語り合い、男女の違いを知る必要があります。
夫婦間で性について話し合う
多くの男性が持っている女性の性に対する認識は、メディアなどから得ていて、そのほとんどが正しくはありません。
また、個人差があるため、一般論を鵜呑みにしてはいけない部分があります。
それを考えると、夫婦が直接、性生活について話し合い、お互いに願っていることを正直に伝えるという努力なしには、永遠に満足できる境地に至ることは出来ません。
特に日本人には、「言わなくても察してほしい」というメンタリティーが強くあります。
それプラス、女性が性について話すことはハシタナイこと、という社会的認識があるために、コミュニケーションが更に難しくなっています。
欧米諸国に比べ、性を軽視し、真剣に扱わない傾向があるため、性生活をよくするための真面目な話し合いを持てないでいるのが現状ではないでしょうか。
お互いの性に対する正しい知識と、それに向き合う努力なくしては、夫婦生活を向上させることは非常に難しいといえるでしょう。
最後に…
「自分たちはセックスレスでも仲良し夫婦です」という方がいるかもしれませんが、それは夫婦として非常に不自然だということ、そして知らない所で夫が性欲を満たすために浮気をしている可能性が大だということに気付いてほしいと思います。
特に女性は、子育てなどに忙しい時期には、むしろセックスがない方が楽だ、と考える人が多いかもしれません。
しかし、セックスレスの問題は、それ以外のあらゆる夫婦問題の潜在的な原因となり得ます。
夫婦の性生活を重視し、互いの性について率直に話し合える関係を築くことができたなら、その夫婦はコミュニケーションに成功していると言えます。
円満な夫婦関係は、円満なコミュニケーションから生まれます。
この機会に、夫婦のセックスの在り方に向き合ってみてはいかがでしょうか。
<参考サイト>
「【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024」(ジェクス株式会社)