隠れアダルトチルドレンのあなたへ

アダルトチルドレン。

一度は聞いたことのある言葉だと思います。

一昔前、この言葉が流行し、本来の意味を離れて一人歩きしてしまったことがあります。

核家族化・少子化社会の中で、アダルトチルドレン化現象は進み、ほとんどの人が何らかの生きづらさを感じている現代日本。

もしかしたらあなたも「隠れアダルトチルドレン」かもしれません。

あなたのアダルトチルドレン度は?

さてあなたは、次のような思いになることがありますか?

  • 旦那さんから指摘されると、自分が否定されたように感じる。
  • 旦那さんの自分本位な言動に、強い怒りが湧くことが多い。
  • いつも自分が聞き役で、自分のことはあまりわかってもらっていないと感じる。
  • 子供のわがままな態度に、無性に腹が立つことがある。
  • 自分に自信が持てず、自分のことを好きになれない。

後で落ち着いて考えてみると、どうしてこんなに腹が立ったり悲しかったりしたのだろう、と思うのに、その渦中にいる時は、強い感情に押し流されてコントロールが効かなくなります。これは、アダルトチルドレン(AC)と呼ばれる人に多くみられる傾向なのです。

アダルトチルドレンとは

アダルトチルドレンとは、精神的障害や病名ではありません。

小さい頃の家庭環境によって、大人になってもある種の生きづらさを抱える人たちのことを意味します。

もともとは、アメリカでアルコール依存症の親の元で育った子供たちに対して使われた言葉でしたが、その後、それ以外の依存症を持った親や、虐待する親の元で育った子供たちにも使われるようになりました。

また日本では、このように明らかに親に問題がある機能不全家庭に育ったわけではなくても、親由来の生きづらさを抱える人全般を指して、この言葉を使うようになりました。

つまり、親からの過度な期待や要求に合わせざるを得なかった子供時代を過ごしたために、大人になってからも自己肯定感が低く、人の反応に過度に敏感で、不安になりやすい性質を持ってしまうのです。

その意味で、今では「自分の生きづらさが親との関係から来ていると感じている人」すべてをアダルトチルドレンと呼ぶ傾向にあります。

ところが、用語の普及に伴い、アダルトチルドレン(AC)という言葉が独り歩きし、様々な誤解や乱用を生むようになりました。

本人の生きづらさや苦痛を深く理解することなく、「うちの夫はACだから」とレッテルを貼ったり、「自分がACになったのは親のせい。自分はどうせ変われない」と被害者意識で自分を正当化してしまう、などがそれです。

自分がACである、と自覚することは大切なことですが、問題をACのせいにしてしまうことで、問題解決から遠ざかってしまうとしたら、それはとても残念なことです。

アダルチルドレンの生きづらさとは

ACの特徴について書かれた本やサイトは沢山あるので、ここではいかにしてAC特有の生きづらさを克服していくかについて考えてみます。

ACの生きづらさは、生活のいろいろな場面で現れますが、大きく分けて、自分とのコミュニケーションにおける生きづらさ、と他者とのコミュニケーションにおける生きづらさとして現れてきます。

(1)自分とのコミュニケーションにおける生きづらさ

①自己肯定感が低く、自分に自信がない。

自分の容姿・性格などに自信が持てず、ありのままの自分をそのまま肯定することが苦手です。自分を高めるために一生懸命努力しますが、それが思ったような結果をもたらさないと、大きく失望してしまいます。

②自分に対して批判的で、許すことが下手

失敗や、完璧にできなかったことに対してクヨクヨと悩み、自分を責めてしまいがちです。失敗した自分はダメな自分、という考えから、ますます自己肯定感が下がってしまいます。

③自分が本当はどうしたいのかがわからない

ACは他人の感情や欲求にはとても敏感ですが、自分が本当はどう感じていて、どうしたいのかを考えることは苦手です。そのため、心から楽しんだり、感情を表現することが苦手です。自分の感情や欲求を優先すると、罪悪感を感じてしまうこともあります。

(2)他者とのコミュニケーションにおける生きづらさ

①相手からどう思われているかに敏感すぎる

ACは、自分が相手からどう評価されるかに過度に神経を使ってしまいます。特に、相手から嫌われることを恐れるあまり、対人関係で不安や恐怖を感じる傾向があります。

②見捨てられ不安が強い

今は愛されていても、この愛が持続するのだろうか?という不安があります。また相手の機嫌を損ねたり、期待に応えられなかったりすると、見捨てられるのではないかという不安に駆られてしまいます。

③自分の言いたいことをしっかり言えない

相手の欲求を拒絶すること(NOということ)や、相手と反対意見を言うことが極度に苦手です。また、人に何かを頼むときも、相手に疎ましく思われるのではないかと感じ、素直に頼めない傾向があります。

④愛されているという実感が持てない

親の期待に応えたり、親の機嫌を取ってこそ愛されるのだ、と思って生きてきたACは、無意識のうちに「愛されるためには相手の感情や欲求に合わせなければならない」と信じています。しかし、それが積み重なると自分の感情と欲求がないがしろにされていることに気づき、不満が溜まってしまいます。

自分と相手のバランスを取る

私たちの心の中には、自分の感情と欲求を主張したい部分と、相手に合わせようとする部分があります。この二つとも大切な心の機能で、そのバランスが崩れると、対人関係に支障が出たり、生きづらさに繋がっていきます。

アダルトチルドレンは、自分の感情と欲求よりも、相手の感情と欲求と優先することを、とても小さい時から余儀なく強いられた人たちです。親が、子供の感情と欲求より、自分の感情と欲求を優先していたり、親が精神的に不安定で、子供が自分の感情と欲求を素直に表せられなかった場合がそれです。

親が子供に期待をかけ、無意識のうちに子供をコントロールしてしまうと、子供はその期待に応えようとして、自分の感情と欲求を抑圧するようになります。そのため、他人の感情と欲求を満たすことに精神エネルギーを使い、自分を優先することに罪悪感を感じるようになってしまうのです。

ACの生きづらさを克服し、あなたらしく生きるには?

ACの人にとって、親との距離感をどうとるかは重要なポイントですが、たとえ親から離れたとしても、自動的にすべてが解決するわけではありません。

自分がACであると自覚している方は、自分自身の心を癒す作業が必要となります。

次のことに気づくことで、幼い頃に作られた信念(思い込み)を崩して、あるがままの自分を受け容れていくことができます。

(1)自分はあるがままで愛されている存在であることに気づく

親に合わせてきたACは、「自分があるがままで愛されるはずがない」と思い込んでいるために、たとえあるがままを愛されていたとしても、それを否定する理由を探そうとします。

「私が夫に合わせていい妻を演じているから愛されるのだ」などがそれです。

これは裏返すと、「いい妻を演じることを止めたら、愛されなくなる」ということと同じです。

「あるがままの自分でも人から愛されるということが、どうしても信じられない」と言う人は、まずあるがままの自分自身を受け容れることから始めていきましょう。

自分にどんな感情が湧いても、否定せずに共感し、感情を受け容れる練習をします。怒ったりイライラしてネガティブになっている時こそ、その感情をしっかり受け容れていきましょう。

(2)自分に優しくしていいことに気づく

私たちが無意識のうちに自分にかけている言葉を、セルフトークといいます。

ACのセルフトークは、自分に手厳しく、否定的です。たとえ人に褒められても、それを真に受けずに「きっとお世辞だから本気にしちゃダメ」とセルフトークの中で自分に語りかけます。

反対に人から指摘されると、「やっぱり私はダメなんだ」と自分を責め、衝撃が倍増してしまいます。つまり、自分にとって肯定的なことは受け取らず、否定的なことだけ取り入れてしまうのです。

自分に優しくするには、自分がどんなセルフトークをしているかを観察し、否定的・批判的なセルフトークを意識的に排除することです。

(3)自分の感情と欲求を大切にし、それを表現していいことに気づく

ACは「自分が愛されているのは、相手の気に入ることをしているから、また相手の役に立っているからであるだ」と思い込んでいます。

無理に相手に合わせずに、自分の感情や欲求を素直に表現しても、相手から見捨てられたり愛されなくなるわけではない、という体験を繰り返すことによって、子供の頃にできた間違った思い込みを修正していきましょう。

最初は、そうすることで取り返しのつかないことになりはしないか、と不安を感じるかもしれませんが、小さいことから感情と欲求を表現していくのがコツです。

時には思い切って、自分のやりたくないことには「NO」と言ってみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

周りからは真面目で頑張り屋さんに見られるACですが、本人は生きづらさを抱えて、孤独を感じていることが多いのです。

そのような人にこそ、本当の意味での自己受容が必要です。つまり、自分自身の好きな部分も嫌いな部分もひっくるめて、丸ごと自分を受け容れること。

それができたときに、私たちは自分がどんな状態になっても失望することなく、見捨てられ不安を克服することができるのです。

どんな時も、自分の味方でいること。

それが、AC傾向のある人に必要なことではないでしょうか?